スピーカーのマグネシウムシールド加工
音楽ジャーナリスト Gさん
(メーカー)
SONY製
(型番)
APM-6
(お客さまの感想)
かつてソニーが心血を注いだ高級オーディオブランド・エスプリを代表する製品のAPM-6。受注生産、贅沢なパーツを駆使した名機として高評価をほしいままにした同スピーカーを使い始めて4半世紀が経過したことから、全面的なオーバーホールも兼ねて内部配線をすべてティグロンのマグネシウムケーブルに交換することにした。
なぜ、同社を選んだか、それは軟銅細線の多芯構造というケーブルの特性と、聴感優先で新素材にこだわらない姿勢、さらには高SN比を誇る最新のマグネシウムシールドという技術に興味を持ったからだ。
オーディオでよくいわれる逆説のひとつに「SN比がよくなると音質が無機質になる」というのがある。何の根拠もない考察だが、確かにノイズレベル改善のみを目指すあまり、しばしば音色が暗くなったり、音楽的な躍動感が後退したりするという現象はみられたと思う。
しかし、今回の改造ではそれは杞憂だった。出てきた音は、これみよがしのワイドレンジではなく、中域を中心とした、柔軟で明色系の音色。といっても光が当たり過ぎていることなく適度な陰影感も出してくれる。それがしっとりとした音色につながっていて、適度な厚みを感じさせる。まさにAPM-6が新たな生命を吹き込まれたような鳴り方に変身した。
特筆すべきは、演奏者の音楽的な表現が極めてよく分かる点だ。たとえば、弦楽合奏の上げ弓、下げ弓、ピチカートのニュアンス、スタッカート、レガート、テヌートといった音楽表現上の意図が以前とは比較にならないほどよく伝わってくる。これは、再生芸術にとっては最も重要なポイントで、オーディオ機器の表現力の高さといっていいと思う。このケーブルの特徴を一言でいうのは難しいが、すべてを、自然にあるがままに出してくるという特性なのだと思う。ぜひ、電源コードやピンコードも聴いてみたいと思った。